
ある地方都市で大きな災害があった。沢山の人が亡くなった。沢山の人の生活が壊された。私も死んだ。
その日の昼に、同じ街のある喫茶店で殺傷事件が起きた。死者は1名。そして、犯人、私の兄は災害に巻き込まれて亡くなった。
テレビでは災害のニュースばかり。そしてそれを見ている人たちには今ひとつその痛みが実感できない。喫茶店のニュースはもう流れていない。痛みのもっと前の段階、ほとんどの人は知ることすらなかった。
知られることすらない死者たちは旅をする。歩き続けて、自身の罪を思い出す。
距離も関係も越境して、だれかのそばに立つことは可能か。そこで街谷さんは冗談みたいなある提案をしてくれた。
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