
「なぜ、ネコに心を奪われたのか?」
まだ、鬼塚はそのことに気付かないでいる。
今日から新卒研修社員戦力化訓練。
30人前後の女性研修員を前に鬼塚は毒舌を交え話す。
鬼塚にとって敵視されるのは当たり前の行為。
研修員の一人、山田亜佐美は特に鬼塚に対して厳しい視線を送っていた。
帰路。
ドラッグストアを出た頃、薄暗い雲を張っった空が冷たい雨を落としはじめた。
「子猫はどうしているだろう」
いつもより足早な鬼塚。公園に急ぐ。
昨日段ボールが置いてあった場所へ歩み寄る鬼塚は、段ボールの中に「みゃあ」というか細い声を聞く。
雨にうたれ、震えている小さなトラ模様の子猫。
気が付くと、鬼塚は子猫を抱きかかえていた。
動物病院で検査をしてもらい、ペットショップで要る物を買い込んだ。
何かの衝動に突き動かされるままに…
遂に家まで連れてきてしまった鬼塚。
玄関前でずぶぬれのままネコを隠し、妻の澄子に怪しまれないように風呂場に駆け込んだ。
子猫を見つめる鬼塚。
鬼塚は、子猫を「トラ」と名付けた。
(C)2008「ネコナデ」製作委員会
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